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隣組調査報告 (2021)

更新日:2022年3月17日

カナダ在住の日本人高齢者の生活に関する調査報告

この度、トロント大学およびサイモン・フレーザー大学の研究者と提携し、バンクーバーに住む一人暮らしの日本人高齢者に関する調査を行いました。


カナダは移民国家ですが、日本人に関する調査、特に一人暮らしの日本人高齢者に関する調査はほとんどありません。長く続くコロナ禍でシニアが経験する孤立や社会的断絶は、ますます深刻なものとなっています。特に日本人を含め、移民など英語を母語としない方で、特に一人暮らしのシニアは、カナダの社会福祉サービスや医療サービスの制度を知らなかったり、必要な制度を利用できていないのではないかという懸念があります。

これらの問題意識のもと、トロント大学とサイモン・フレーザー大学の研究者でカナダ ・バンクーバーにお住まいの日本人シニア15人(70代〜90代)の方々にインタビューをさせていただき、その結果をまとめました。


本文は英語ですが、以下、日本語で調査概要をご紹介いたします。


カナダ 在住の日本人シニアの人生経験、コミュニティへの参加や高齢化に対する認識、サービスニーズについて、コロナ禍における生活の変化などを伺いました。インタビューからは、日本人シニアの日系コミュニティへの参加の多様さ、サービスの利用の有無、新型コロナ流行前と流行中の日常生活における困難や葛藤、これまでの日本やカナダ での生活状況が明らかになりました。一言に「日本人」「日系コミュニティ」といってもその実態は多様で、毎日ご友人とゴルフや趣味を楽しんでいる方もいれば、ほとんど人とは合わない方、また日本人とのお付き合いはほとんどない方などがいらっしゃいました。(詳細は報告書をご覧ください)。

普段利用しているサービスや、日常生活の様子などに加えて、参加者の語りから4つの重要な要素を抽出しました。

  1. 「関係」が重要である。サービス利用するため、継続的に組織やコミュニティとつながるには、何を提供するかというサービス内容よりも、「個人的なつながり」が重要である。

  2. 職員に負担をかけることへの恐れと、カナダにおける社会福祉団体の運営方法やサービス提供についての誤解が、日系福祉団体とシニアの間にある隔たりを生んでいる。というのは、カナダでは、地域社会による相互扶助が強調され、民間団体による福祉サービスが行われるため、行政が主に福祉サービスを提供する日本とはかなり異なる。また時にシニアが団体と密接な関係を持ち、スタッフや運営に対して、ケア・配慮の気持ちを持っていることが、結果として助けを求めたり、サービス利用をすることをためらわせることにもなっている。

  3. 「もっと早く○○していれば」という語りが聞かれた。これは日本人シニアは、様々な面で、より早い段階で老いに備えていればよかったと今は考えているものの、複雑な制度や仕組み、社会的に組み込まれている差別構造、生活環境、言語などの障壁によってリタイア後の生活について考えたり、準備することが困難であったことを示している。

  4. 差別、トラウマ的な過去の経験、羞恥心などが日系コミュニティやカナダコミュニティとの関わりを阻んでいる。インタビューしたシニアの中には、日系カナダ人コミュニティや日本人向けの社会福祉団体から距離を置いていると述べる人もいた。その理由は以下のように説明できる。1)日本やカナダの日系社会に対する複雑なアイデンティティと(非)帰属意識、2)カナダ社会やコミュニティからのトラウマ的体験と拒絶、3)恥の内面化と強い自己責任感

本調査はカナダ在住の日本語を話す人々がサポートや福祉サービスを必要とし始める前に、できるだけ早い段階でコミュニティや組織とつながる必要性を示唆しています。そうすることで生活上の問題が生じた際にもスムーズにサポートや情報提供が可能になります。また隣組のようなコミュニティ団体は、サービス利用者としてのつながりだけでなく、ボランティア・寄付・メンバーなど、自分の好みや状況に応じた多様な形で参加できるコミュニティのハブとなる可能性も示されました。このような、いわば「ゆるいつながり」を維持することによって、人々は心身の健康を維持したり、その後の人生でサポートが必要になったときにサービスを利用しやすくなると考えます。またコミュニティの福祉組織を知ることや、その活動に参加することで、カナダの福祉サービスの提供の方法(民間団体やNPOがサービス提供をおこなうが、そこには相互扶助の理念があり、人々の参加と協力が必要になること)をカナダ在住の日本人も理解することができます。これは海外に暮らす日本人のコミュニティーの維持や再構築につながるのでは、と考えています。

調査結果の詳細をお知りになりたい方は、こちらから本文をお読みください(レポートは英語です)。

長く海外に住んでいてもライフステージの変化などから、困ったこと、不安なこと、わからないことが出てきます。特にシニアになってくると心身の変化から健康、住まい、お金などお困りごとも変わります。また年を取ると英語は忘れてしまったり、母語の日本語がいい、という声も聞きます。海外在住の日本人が増えている中、どこに住んでいてもシニアライフ


[調査報告の概要の和訳を調査に研究者としてもご尽力いただいた二木泉さんに提供いただきました。]


Niki, I., Ichikawa, V., Sakamoto, I., Funahashi, K. & Kadowaki, L. (2021). Exploring the Experiences of Community-Dwelling Japanese-Speaking Seniors in Metro Vancouver: Research Report. Vancouver: Tonari Gumi – Japanese Community Volunteer Association.

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